HRM(人的資源管理)研究者の Oxford 滞在記(2020-2022)

1年目は配偶者同行で休業して渡英。2年目はサバティカルで渡英。日常的な出来事(とたぶん研究)の記録です。英語は練習のために書いているので,ミスが多々あります。ご了承ください。

DAY528 [渡英474日] 2021年9月10日(金):OUNCのcoffee meeting, 調査票の見積もり依頼,質問票調査にかんするエッセイ

 朝からOUNC(オックスフォード大学の配偶者の会)のcoffee ミーティングに参加。毎週金曜日に開催されているものの,これまでは旅行に行っていたり,子供の夏休み中で行けなかった。会場は,オックスフォード大学の社交クラブの施設で,幹事のご婦人に加えて,私とインドのムンバイから来た女性,私の自宅の側に住んでいてお子さんが私の息子と同じチリから来た女性,東欧?ロシア?から来られた女性であった(男性は私一人)。1.5時間ほど会話をして帰宅。人と会話すると咄嗟の単語が出てこないことがあり,まだまだ練習が必要。

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朝,庭に出現したリス(画面中央)

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OUNCのcoffee meeting

 英国のチップ文化について尋ねてみたがいまいち明確な答えが返ってこなかった。北米の場合,チップが生計のうえで大きな割合を占めるのに対して,英国の場合,最低賃金があるのでチップはあくまでも追加的なものだと(その婦人は)話していた。ただ,業界や会社,地域によっても違うと述べていた。私はタクシー(cab)を例に説明したが,追加的なチップを払うのかいつも迷う。Edinburghでは結局チップは払わなかった。特にCOVID-19を警戒してカード決済が主流になっていると,カードの精算段階でチップを入力できればよいのだが,そうではないので迷う。(レストランでは,カード決済時に通常料金とは別にチップを入れる場合もある)

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Heyfield Deliにあった地ビール。いくつか種類あり。

 午後は,調査票を完成させて見積を出す。T3まで3つの調査票を同時に作成したので疲れた。でも一度に作成しないと,どの時点でどの変数を作成したのか分からなくなるので大変で,予想以上に時間がかかった。

 

<質問票調査に関するエッセイ:きちんとまとめてペーパーにしたいのでとりあえずメモ>
 質問票調査で常に悩んでいることとして,オリジナル項目をどこまで入れるのか,ということがある。既存尺度の組み合わせ(A論文で使われている概念aと,B論文で使われている概念bを扱うとどうなるか,例えば,aがbに影響を与えるかもしれないという仮説)は,欧米の論文(もちろん日本も)に掲載されやすい。でも,それは本当に理論の発展に貢献したことになるのだろうか。
 もう1つは,オリジナル尺度を作成すること。オリジナルの尺度を作って「○×」と呼ぶ,とするのは一見すると目新しいように見える。しかし,尺度開発はそんなに簡単なものではなく,真剣に尺度を作ろうと思うのなら,項目測定理論(Item Respose Theory)で尺度の妥当性が検討されないといけない。それに本当にその概念がこれまで測定されていないのか,周辺概念を渉猟したうえで,可能ならば頭の中でベン図を描いた方がよいのかもしれない。例えば,概念aから2項目,概念bから2項目,概念cから2項目,オリジナル2項目の合計8項目が新しい概念だ!とするのも拙速だと思う。なぜなら既存概念との弁別が難しくなるから。
 他にも既存研究の尺度にオリジナル項目を数項目足して,(とりあえず)確立している概念の威光を借りて先に述べた尺度の妥当性を検討せずに紛れ込ませている論文も多い。方法論としては未熟かもしれないが,ここに面白い要素が隠されている可能性もある。そう考えると,方法論はとても大切だけど,方法論にがんじがらめになると息苦しく,新しい概念は生まれづらいかもしれない。

 また,欧米の尺度をそのまま翻訳して使用することは,国際比較をするうえで重要だけど,明らかに日本に合わない尺度(例えば,「会社のエントランスには銃を持った警備員がいる」など)もあり,それらは削除して用いることが多い。他方で項目をマイナスするだけでなく,加えることも重要で,それが「日本ならでは」の尺度を作成することになるのかもしれない。

 サバティカルから帰ってきた先生が,大きく2つのタイプに分かれるように感じている。1つは,欧米流の研究のストリームに乗る人。もう1つは,欧米の研究に投稿することに目を向けず,国内の研究に回帰する人,ごくまれに両方を類まれなるバランスで実践している研究者もいる。日本の状況にマッチした現象をオリジナルの尺度を用いて捉えることで日本の学術や実務に貢献する人がどちらかというと多いように思える(あくまでも個人の主観だが…)。